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自閉症文学のススメ(15)※最終回

皆様ごきげんよう、みっちゃんです。
まずは、当方の不手際により本掲載が大幅に遅延したことをお詫び申し上げます。
さて、本日で最後の講座になりました。それでは、本日の講座を行います。
Lektion30:自己紹介と自己実現、そして。
 物語を作るという行為は自己紹介に似ています。素材はすでにあるでしょうが、そこに自分の想念という触媒を経て作品を召喚する行為、それが創作です。その表現方法が文章なら小説に、絵なら漫画に、音楽なら歌に、プログラミングならゲームになるというだけの違いにすぎません。それを表現方法の違いだけで差別するという行為がどれだけ愚かしいか、どれだけ傲岸に満ちた行為か。これを読んだ方ならわかっていただけるとは思います。ましてや小説の中でも、まあそもそも小説という言葉自体が差別用語なわけですが、優劣をつけて一定の型式しか許さない行為、それがどれだけ表現を馬鹿にしているか。
 しかし現実は非情です。そういった愚劣蒙昧な輩がのうのうと蔓延り、本来崇高とされるべき生産者である作家が嘲弄されているのですから。作家とは何もないところから何かを作り出し、等価交換やエネルギー保存の法則すら乗り越える偉大なものであり、石油交換率から言えばよほど効率的にふるまえる想念者であるにも関わらず、です。
 しかし、逆に言えばそういった作家は一握りでしょう。大半の作家はその愚劣蒙昧な輩に迫害され、夢破れて去っていきます。それがどれだけ天唾である行為かは最早述べました。しかし、それが現状なのです。と、いうわけで。そろそろ最後の質問に移りましょう。
Lektion31:最後の問い
 はっきり言いましょう、作家になるのは並大抵の努力では不可能です。しかも努力以外にも天運や才能を必要とします。
 魔法陣グルグル2に曰く。「大人になっても子供として何かを成す者はいないわけではないが、そっちはそっちで厳しいぞ。勉強よりもよっぽどな!」とあります。これはおそらく衛藤ヒロユキ先生の本音でしょう。事実、魔法陣グルグルという前人未踏の大成果の続編を作るわけです。衛藤ヒロユキ先生のような伝説の英雄ならまだしも、並大抵の凡夫ならば普通に失敗して終わりでしょう。何もない荒野を気儘に開拓するのとはわけが違います。すでに領土乱立する中を乗り越えて成功作を作る。はっきり言って人間の所業じゃありません。しかし、衛藤ヒロユキはそれを成した。前例を作ったのです。
 しかし!それは衛藤ヒロユキという神を超えし伝説の英雄だからこそできる所業。私を含めたその辺の凡夫が真似をできる所業ではありません。それを前提に置いた上で以前聞いたことを今一度、尋ねます。それでも貴方は作家を目指しますか?

Last Lektion:それでは、PEAKSで!
 と、いうわけで。いよいよこの自閉症文学講座も最後の時が迫ってまいりました。先程の質問にはいでもいいえでも構いませんが、それに答えたからなんだというわけでもありませんが、何かの参考にはなったと私は信じさせていただきます。PEAKSはいつでも発達障碍者に門戸を開いています、そこで本人に会いたいと思うなら、何卒お尋ねください。
 それでは、PEAKSでお会いいたしましょう!


当事者研究編ノ第2回

 皆様、こんにちは。みっちゃんです。
 本日は所長の連載許可も出たので、当事者研究の必要性に触れつつ、わたし個人の当事者研究を紹介したいと思います。
 今回は、かつてあるページでも触れましたが、仮想脳内物質、ゲヘゲラーデンについて述べたいと思います。
 さて、この物質ですが、わたしの場合はある物語を視聴読解することによって多量に分泌されるのですが、他の方にとってもそうとは限らないでしょう。現に所長は面談の際にその物語の絵のタッチが嫌いだと言いましたし。
 しかし、仮想脳内物質として提唱する以上は、ほかの人にも経緯はどうあれそういった脳内物質があると仮定することによるものなので、ではどういった経緯によってその脳内物質ゲヘゲラーデンは分泌されうるのかということですが、その人が好きなものに接することによって分泌されるものであると定義いたします。いわゆる、好きこそものの上手なれというのは好きだからその行為をやる、故に上達するという意味なのですが、ではなぜ人は好きであるという行為を繰り返し行うのか。それは脳内物質が快感として分泌されるからであろうことまでは現状の脳科学でも常識となっていますが、ではその快感をつかさどる脳内物質というものは果たしてドーパミンやアドレナリンなど、既存の概念物質のみで説明できるのか。わたしは否だと思います。故に、ゲヘゲラーデンを提唱するのでありますが、ではそのゲヘゲラーデンとはどんな化学式なのか。残念ながらわたしは自然科学者ではないので研究するだけの学問的蓄積はありませんが、ある種の勘を以てそういった脳内物質が存在するのではないかと思っています。
 確かに、既存の物質で説明できるかもしれません。ドーパミンが何%、アドレナリンが何%、オキシトシンが何%、オレキシンが何%などの配合で組めばそのゲヘゲラーデンが再現できる可能性だってあります。しかし、現状ではその脳内現象は事例が少数しかないため、ブラックボックスである脳を解明できていない現状、ゲヘゲラーデンという仮想脳内物質を素人が提案してもいいのではないか、と思います。
 それでは、その脳内物質は好きなことをすれば分泌されるのであれば、過去にもそういった事例は存在するのか。すると思います。しかも、割と歴史的に重要な出来事で。それは、宗教的法悦なのではないかとわたしは考えています。例えば、インド地方にいた故ゴータマ・シッダールダ氏が悟りを開いたとされる出来事も、そのゲヘゲラーデンをスジャータという人物が提供した乳粥によって偶然大量に分泌されたことにより、結果として仏教は誕生したのではないか、と。すなわち、ずっと苦役を身体に強いており、その苦役から解放され食事を摂取し、その食事がよい味だったために今まで縛り付けられていた心身が解放されたため、偶然にゲヘゲラーデンが分泌されたのではないかと思います。なぜこんなことを書いたかというと、彼曰く、「ずっと未来には凡夫でも悟りを開くことができる」という言葉を遺しています。これはどういうことかと言えば、彼はおそらく聡明なその知性から、未来の世界は凡夫でも自分が体感した苦行の如き苦役に縛り付けられていると勘付いてしまったのでしょう。故に、その現象を、つまりは悟りを、凡夫でも体感することができてしまう、と。
 さて、紙面のわりに話が進んでいませんが、元々今回だけでゲヘゲラーデンを終えるつもりはありません。前回の自閉症文学に比べ、今回はテーマごとに1回や数テーマを1回ではなく、1つのテーマを何回にもわけて彫っていきたいと思います。そんなわけで、次回、話の転び方によってはどうなるかはわかりませんが、引き続きゲヘゲラーデンの効能について探っていきたいと思います。それでは。


当事者研究編ノ第1回

 はいどうも、お久しぶりです。みっちゃんでございますよ。
 というわけで、自閉症文学からの読者はお久しぶり、そうじゃない方は初めまして。本日からは当事者研究の重要性を講座していきたいと思います。
 私の当事者研究というものは、今まである程度やってきましたが、大別すると記憶の結晶化、トラウマのドミノ倒し、そして仮想脳内物質などになりましょうか。ん?どこかで聞いたことがある?はい、ゲヘゲラーデンを提唱したのは私です。というわけで、今回はかつて卒業論文にも書いた記憶の結晶化とトラウマのドミノ倒し、可能ならば仮想脳内物質ゲヘゲラーデンにも触れていきたいと思います。詳しい話はまた、連載された場合に個別に行いますけどね。
 さて、まずは記憶の結晶化。これはいわゆるトラウマのことですが、従来のトラウマの概念と違うのは、プラスの現象やトラウマの連結も取り扱うことですね。トラウマ、専門用語ではPTSD、心的外傷後ストレス障害と言いますが、これはシェルショック、日本語に直すと弾薬神経症でしょうか、から発生したので当然のようにマイナスの現象に適応されています。当たり前ですよね、プラスの現象を思い出すことは文字通りアッパーになりこそすれ、ダウナーに落ち込むことはありませんから。では、何故そのプラスの出来事も結晶化では扱うのか。それは、結晶化は文字通り、記憶という流れゆくべきもののなかで、決勝になってしまい簡単には溶けてくれない現象のことを言うからです。そして、結晶である以上は成長してしまうこともございます。結晶が成長して、別の結晶と繋がれば、当然連結しますよね。これが、トラウマの発作が起きると次から次へ悪いことを思い出し、結果的に鬱になってしまうという現象の正体ではないか、と私は考えています。すなわち、自閉症者の記憶回路が定型者に比べてとびぬけた性能なのは、これがあるからではないかと思っています。
 次に、トラウマのドミノ倒しですが、こちらは結晶化する過程を取り扱うと思ってください。すなわち、一度結晶ができてしまい、その結晶に記憶が引っ付いてしまう現象ですね。どういうことかと申しますと、記憶があります、それが何らかの作用で結晶になります。そしてその結晶がだんだんと思い返すことによって成長してしまいます。そして、その結果、別のどうでもいいはずの情報や記憶が、結晶にまとわりつくことによって結晶に反応してしまい、結果としてトラウマが想起され、発作が起きる。書いてしまえば当たり前のことではありますが、余り誰も論じてこなかったことだと思っています。もし研究している専門医の方がいたら、ごめんなさい。
 最後に、仮想脳内物質のゲヘゲラーデンですが、これはいわば、ドーパミンやノルアドレナリン、アドレナリンやセロトニン、そして確か他にはヒスタミンあたりでしたっけ、アッパー系の脳内物質は。そういった物質の単体では証明できないような現象があるから、これは新しい脳内物質があるのではないかと考えて、それに名前を付けてみた、その名前が「ゲヘゲラーデン」でございます。え?意味はあるのかって?ないですよ?しいて言うならばそれっぽい単語を翻訳サイトでドイツ語に直したものをローマ字読みしただけで。で、このゲヘゲラーデンですが、これはいわば、ドーパミンその他ではない、特殊なプラスの記憶が想起された際に分泌される脳内麻薬の一種といった立ち位置でしょうか。つまりは、ひょっとしたら複数の脳内物質が多量に出た現象である可能性もありますが、私は別に脳科学者とかではないので勝手に主張させていただきます。論文でもありませんからね、これ。
 と、いうわけで、紙面が尽きてきたのでこの辺で切り上げますが、もし好評なようならば、順次今迄考えていた当事者研究の題材を放出していこうかと思っています。
 以上、みっちゃんでした。それではもし機会がありましたら、またよろしくお願いいたします。


自閉症文学のススメ(14)

 皆様こんにちは、前回までは例文を使った講座を行いましたが、今回の講座は最終回を次に控えるのでちょっとしたコラムになります。
Lektion28:独自言語のススメ
 皆様は、日本語を使っていますね。日本人なのでそれは当たり前のことなのですが、私を含め発達障碍者というものはたまに言葉選びを間違えたりします。それは知識不足もないとはいえませんが、ひょっとしたら定型者とは根本的に異なる独自の思考法をしているからかもしれません。言語は文化の一種です、そしてその人間の人格の表現とも言えます。すなわち、人格や文化が違ったら当然使用する言語も違ってくるわけです。発達障碍者は当然、定型者とは違います。すなわち、人格もさることながら文化的にもあるいは異なるものなのかもしれません。日本は幸運にして80年前までは、あるいは160年前までは、縄文時代と飛鳥や古墳などの時代を別と考えるならば2700年程度前までは根本的に異なる文化とは接することなく、独自の文化に浸かっていることができました。そして、現在は変質しているものの根本的な断絶は経験せず現在まで連綿とした三千年弱の文化を築いています。人間は、だれしもたいていは自分の文化というものの特異性を意識せず育っています。特に、他の文化と接する機会がない場合は余計に。何が言いたいかと言いますと、発達障碍者は独自の言語体系を構築する素養に恵まれているということです。それこそ、指輪物語の原文は古典教養によって編まれた独自言語を原文では使用していますが、あれと同じレベルとまではいかなくとも、ユルヴィーユのような空想都市などを構築した人間もいるように、そういった思考は発達障碍者の最も得意とする分野なのではないかと思います。すなわち、発達障碍者こそ、表現者として最も向いているのだと私はここに発言いたします。ゆえに、当講座は自閉症「文学の」ススメなのです。別に絵が描けたり音楽が作れたりするならばそちらの得意分野を生かすのがよろしいと思いますが、大抵そういったものは別の才能や果てしのない教養が必要でございます。しかし、文字を操る行為は定型者に劣らない知性と教養、そして少しの試行錯誤があれば容易に可能です。ゆえに、私は文学をすすめるのです。漫画を描くには絵を描く必要があります。歌を作るには音を奏でる必要があります。それはどちらも非言語的才能です。しかし、物語は言語的才能であり、なおかつ特別な道具を必要としません。極論、ペンと紙すらない所でも、文字すらなくとも、物語を作ることはできます。保存ができないだけで。物語は、最も古風な表現体系であり、ゆえに世間では漫画よりも貴ばれているのです。逆に言えば、物語の地位が高いのは歴史性だけであり、そして物語も昔はそこまで高い地位ではありませんでした。いずれ、漫画が高い地位にたどり着くことも、私は不可能ではないと思っています。
Lektion29:振り返ってみよう、そもそもここで言う自閉症文学とは。
 自閉症文学とはいったいなんであるか。それは、発達障碍者という一人一人が特異な文化を持つ文明圏の、文化紹介だと私は心得ています。それが、エッセイであれ、物語であれ、己の脳髄から作ったものには違いありません。すなわち、この世に出た全ての作品は自己紹介なのです。ゆえに、優れた作品を作った人間が倫理観に悖る行為をすると叩かれるわけです。紹介と自己が違うじゃないか、と。とはいえ、作品が優れているとは何が優れているかという判断基準がありません。面白いというものは技巧であり、判断基準も存在しますが、物語の本当の評価軸ともいえる好ましいかどうかということはそれこそ個々人によって違います。面白くても好ましくない作品というものはどれだけ面白くても評価はされません。好ましくないのですから。だれが好ましいものに進んで近寄りますか。仮に近寄れと強制しても恨みを買うだけでしょう。嫌いなものを嫌いと言える社会は健全です。すなわち、それを好ましいと思う者が多数いるからとそれを嫌いだと言えない社会は不健全極まりありません。社会とは、多様性を認めなければ柔軟たりえません。そして、柔軟ではない社会は血管の様に寿命が早いでしょう。ましてや、それを好ましいと思う者が社会的地位が高かったり、あるいは単純に強かったりするから人数が少なくてもまかり通る社会とは、もはや人間社会ではありません。それは、ただのディストピアです。


自閉症文学のススメ(13)

皆様こんにちは、本講座も残り三回となりました。本日も例文を使った講座を行います。

Lektion27:例文を通してミームを学んでみよう
 ろくろ首という妖怪がいる。首が伸びることで有名だが、その首はなぜ伸びるのかという疑問を持ったことはないだろうか。弱点のことをネックというように、本来首とは弱点である。その弱点をわざわざ長くしてさらけ出す。いくら人間を驚かせるためとはいえ、なぜそのようなことを行うのか。よく、妖怪のレゾンデートルは人間を驚かせるためであるからという話を聞くが、ならばレゾンデートルのために妖怪は命をさらけ出すのだろうか。実は、ろくろ首にはまだ種類があり、首だけが離れて飛んでいくものや、その首に内臓がくっついて飛んでいくものもある。それらに関しては、どう考えても生命体とはいいがたかろう。あるいは、さすがに首だけが離れて飛んでいくというのはあり得ないと思った結果、首が伸びてつながっているならばあり得るかもしれないという判断のもと、そういったように話の内容や存在意義を改造された可能性もある。一応、民俗学上はろくろ首の離れている首をこう飛んでいるんだという効果線を描いた結果、それがつながっている細い首に見えたのでそう描いたゆえに、そう伝わったということが定説となっているようだが、ならば原点回帰として首が離れて飛んでいくといったように描写するのも可能ではないか。確かに首が繋がって伸びていると考えたほうが生物学的にはまだいそうではあるが。

 今回も、例文は自作でございます。さて今回はミームについて学ぶという理由で例文を書きましたが、そもそもミームとは何なのか。手元の国語辞典には載っておらず、広辞苑を借りてきて調べたら「文化の伝達や複製の基本単位。イギリスの進化生物学者ドーキンス(Richard Dawkins 一九四一)が提唱。人間の文化も遺伝子と同様に受け継がれ進化するという考えに基づく。」とあり、すでに私の想像とは多少違っているのですが、そこはそれ、次回の話題として取っておきましょう。さて、ミームを学ぶ理由なのですが、発達障碍者というものは基本、突然変異体の一種ではないかと私は考えております。突然変異体、即ち人類が進化する可能性です。人類即ちホモサピエンスとは別に完成形ではなく、恐竜の様にたまたま地球上の天下を取っているにすぎず、もし人類よりさらに強い生命体が現れたら倫理的なことは置いて、早晩滅亡するでしょう。別にホモサピエンスは優れているわけではなく、たまたま強い知性を持っているからここまで繁栄しただけであり、それは生物学的に言えば極論、恐竜のような強い肉体ではなくそれを補って余りある知性と、それに付随するものとして汗腺の発達と毒性への耐久力が強い、という程度にすぎず、純物理的に言えば素っ裸の人間などか弱いものです。ゆえに、社会を作り防衛してきた。社会なんてものも所詮はインフラの整った群れです。しかし、人類のような強い知性を持っている以上、倫理を考えることができます。群れに適合しないから淘汰するというのは獣の理屈です。障害者虐待防止法というものは、ある意味突然変異体を保護し進化の可能性を模索するという人類の無意識化の知恵かもしれませんよ。


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